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軍医・森林太郎は改造人間である!!
医師兼文学者である彼は日本の平和の為にオーガイザーに変身し、戦うのだ!!
独逸留学中、黄金の夜明け団(クロウリー派)の手にかかり、改造手術をされる林太郎。
だが、ドイツ人少女エリスの助けにより脱出に成功!!
林太郎はエリスに身の危険が及ぶ事を知り、共に日本に帰ることを勧める。
果たして、林太郎とエリスは無事に日本に帰ることが出来るのか!?


伯林(ベルリン)郊外、

「ハァ、ハァ・・・。ここまで来れば大丈夫だろう」
林太郎は荒い息を吐きながら、エリスと握っていた手を離した。
「でも、これから如何なさるおつもりで?」
碧眼の少女、エリスが話す。その言葉は震えていた。
「日本に帰るとして、このまま独逸の港を利用は出来ない。クロウリー派が待ち伏せしているとも限らない・・・」
悩む林太郎に瞬間的に閃くものがあった。
「そうだ!露西亜に行こう!!あそこには今、わが友・謙吉が滞在している。あいつに頼めば、なんとかなるやも・・・」
林太郎はエリスの方に向き直ると、真剣な表情で語った。
「露西亜は寒い所だ。君は無理して付いてくる事はない」
だが、エリスは無言で首を横に振った。
「あなたと一緒にいたい・・・」
エリスはか細い声で言った。
「そうか・・・。ならば行こう!露西亜へ!!」
林太郎は再び、エリスの手を握り締めると市内の駅に向かって行った。
そして、それを見つめる一つの黒い影・・・。
「そうか・・・露西亜か。急いで、ゲーテ様に報告をせねば・・・」
黒い影は身を翻すと、闇の中へと姿を隠した。

一方、露西亜首都・ペテルブルグ

「う〜〜ん・・・」
ここに思案に耽る一人の青年がいた。名を相沢謙吉といった。
「どうした謙吉。折角のパーティーというのにそんな難しい顔をして。そんなのでは女も寄ってこんぞ。ほら、笑いなさい」
「心配ご無用です、天方伯。ちょっといやな予感がしただけですので・・・」
謙吉は彼の上司に当たる、天方伯に対してそう言った。
「そうか?何かあれば私に言いなさい。ある程度の事なら解決してあげよう」
そう言って、天方伯は踵を返し、パーティー会場へと戻って行った。しかし、謙吉の胸の不安はより一層、大きくなっていった。
「本当にいやな予感がする・・・。私の人生を揺るがすような事が予感が・・・」

数日後、ホテルの謙吉の部屋

「相沢さん?相沢さん!」
早朝からドアをノックする音がする。その音で謙吉は目を覚ました。
「一体、如何したんですか?」
謙吉はドアを開けるなりホテルのボーイにそう言った。
「独逸からお手紙が届いています」
「あっ、そう」
と、呟きながら謙吉はボーイにチップを渡して、ドアを閉めた。
「なんてこった。嫌な予感が的中しやがった」
頭を掻きながら、文面を見る。そこにはこう書かれてあった。
『親愛なる、相沢君へ。ちょっとした事情で独逸にいられなくなったのでそっちに行きます。汽車だからヨロシク。君が好みといっていた金髪碧眼の少女も連れています。』
「マジかぁ〜?困るんだよ。面倒に手足の生えた奴が来るのは」
謙吉は思わず、ため息を吐いた。以前、林太郎との間に何かあったらしい。しばらく考え込んだ謙吉は、思い切って上司の天方伯に相談する事にした。
「・・・という訳なんです」
謙吉の相談を受けた天方伯は目を瞑り、思考を巡らせた。だが、何時の間にか睡眠状態に入っていた。
「ちょっと、天方さん?寝ないでまともに考えてください!!」
ようやく寝ている事に気付いた謙吉は必死に起こした。
「ん?ああ、すまんの。何せ昨日は遅くまで飲んだから寝不足なんだよ。で、話は何だっけ?」
ガクッとする謙吉に天方伯は悪びれずに尋ねた。謙吉はガックリと肩を落として、もう一度、最初から話し始めた。
「・・・という訳なんです」
「・・・・」
今度は応答もない。謙吉が覗き込むと、天方伯は再び睡眠状態に入っていたのだ。
「ちょっと、天方さん?寝ないでください!まともに考える気はあるんですか?」
謙吉は立ち上がって天方伯に問い掛けた。しばらくして、寝ボケかけている天方伯の答えが返ってきた。
「う〜〜ん、・・・ない」
その答えに謙吉は机に突っ伏して泣き叫ぶ事しか出来なかった。

その頃、露西亜首都に向かう汽車内

「林太郎さん。一等車両なんて、よく切符取れましたね」
駅弁をほおばりながらエリスが尋ねる。
「これも国家権力の賜物だよ。何せ私は独逸留学生。留学費用やら何やらは国の方が支給してくれるからね」
指を立てて、横に振りながら林太郎は答えた。
「それにしても・・・この車両、私たち以外に誰も乗ってないから貸切みたいでいいですね♪」
エリスは弁当から取り出したフランクフルトを4分の1くらい口の中に入れて、そう言った。
「はっ、言われてみればそうだ・・・。私たち以外に客がいない。これは・・・」
ようやく、林太郎も列車内の異変に気付いた。思い返せば、いくらこの季節だからといって露西亜に行く客がいないという事はなかった。それを林太郎は思い出した。
「エリス・・・」
「はい?」
「ここにいなさい」
エリスにその場で待つよう言って、林太郎は二等車両の方へ向かって行った。
「ちょっと、林太郎さん!今のどういう意味ですか〜」
「説明してる暇はない!君はとにかく、そこにいるんだ!!」
林太郎の態度を不審に思いながら、エリスは独自の解釈をした。
「・・・きっと、トイレね。誰もいないから安心して行っちゃったのだわ。行きたいなら早く言えばよかったのに・・・」
全然、的外れな解釈をしながらエリスはフランクフルトの残りをほおばった。

二等車両内、

その車両にも人は誰も乗っていなかった。林太郎は大声で叫んだ。
「クロウリー派の怪人め、どこにいる!このオーガイザー、逃げも隠れもせん!!」
すると天井の方から声がした。
「ここだ。貴様の頭上にいる。ゲーテ様から貴様を抹殺するように命じられたこのウェルテルがお相手しよう・・・」
言葉も終らぬうちに、ウェルテルという男は攻撃してきた。林太郎は素早く回避すると胸のポケットにある特殊な万年筆を取り出すとそれを振りかざし、唱えた。
「変身!!」
その瞬間、林太郎の姿は眩い光に包まれた。

説明しよう!!
林太郎は胸に忍ばしてる万年筆(ツワノ)を振りかざし、『変身』!!と唱えることにより、文豪 オーガイザーに変身することができるのだ!!

「待たせたなウェルテル」
オーガイザーに変身し終わった林太郎が言う。
「一つだけ、貴様らに訊きたいことがある!!」
ウェルテルは表情を変えずにオーガイザーを見やった。
「俺を狙うだけならまだいい。だが、何故エリスまで狙うんだ!!」
質問にウェルテルは「フン」と鼻を鳴らして聞き流した。そして、答えの代わりにウェルテルの攻撃が返ってきた。
「そこまで言うのなら教えてやる!あ奴は我等の研究の邪魔をした。舞姫の分際でだ!!それに怒ったゲーテ様が直々に命を下されたのだ!『お前とともにあの憎き舞姫も抹殺せよ』とな!!」
その間にも、ウェルテルの攻撃は止まない。オーガイザーは紙一重の所で全てをかわしていた。
「何故、そこまでこだわる!!あの娘がお前らに危害を加えるとでも言うのか!!」
オーガイザーが蹴りを繰り出す。しかし、ウェルテルは難なくかわした。
「ゲルマン民族こそ世界で唯一無二という事を知らしめねばならん!その機会を窺う為、秘密裏に暗躍する我等の正体を知られては困る。だから消す!もちろん、組織を抜け出したお前もだ!!」
その瞬間、ウェルテルの腕が伸び、オーガイザーの腕に突き刺さった。思わず、オーガイザーは地面(といっても列車の屋根だが)に倒れた。
「オーガイザーも大したことはなさそうだな。止めを刺してくれる」
「ここまでか・・・」
ウェルテルが近寄ってくる。ウェルテルの右腕が高く上がったと同時に暗闇が訪れ、ウェルテルの姿が消えた。
「え?」
オーガイザーは痛めた腕を庇いながら辺りを見回す。だが、それらしき姿は見当たらない。ようやく暗闇が晴れ、オーガイザーは納得した。
そう、ウェルテルが腕を上げた瞬間に汽車はトンネル内に入ったのだ。つまり、ウェルテルはトンネルの上部にぶち当たって飛ばされたのだ。その証拠にトンネル上部には奴の後形がくっきりと残っていた。
「助かったか・・・」
オーガイザーはそう呟いて、列車の屋根から下りて、車両内へと戻ってていった。

露西亜首都・ペテルブルグの駅

結局、謙吉は迎えに来ていた。その時が近づくにつれ、胃の方がキリキリしてくる。それを必死に押さえて、謙吉はひたすら待った。
「全く・・・とんだお荷物を抱える事になりそうだ。こっちは条約改正の交渉で忙しいのに・・・」
「まあまあ、良いではないか、相沢。お前の友人も一度、見てみたい気もす・・・」
「天方さん!だから寝ないでって!!うわっ!ちょっと・・・寄りかからないで下さい!!」
ウトウトする天方伯を必死に揺さぶりながら、謙吉は汽車の到着を待った。しばらくして、天方伯が急に目を見開いた。
「どうしたんですか?天方さん」
「来る・・・。汽車が・・・」
そう言い残して再び天方伯は深い眠りに堕ちていった。謙吉はホームの先を見やる。向こうから汽車がユックリと入ってきた。その汽車を見て、謙吉は口をあんぐりと開けた。
「こ、これは一体・・・」
彼が見たのは汽車の変わり果てた姿。所々に穴が開き、車輪は折れ曲がる寸前になり、吐く煙も弱々しかった。
だが、その姿を見たのは彼だけではない。まわりにいた他の人たちも同様に呆然と汽車を眺めていた。
汽車がプラットホームに入り、扉が開く。林太郎とエリスが中からユックリと降りてきた。
それを見るや、謙吉は二人の腕を引っ張り、他の観衆の間を縫うようにして駅から出た。馬車を捕まえた謙吉は車内で林太郎を激しく問い詰めた。
「林太郎!どう言う事だ!!汽車があんなになるまで何があったんだ一体!!」
「い、痛い痛い。腕を引っ張るなって。それは・・・」
「それは?」
「君の好きな金髪碧眼で許して♪」
「許すかっ!!」
笑顔ではぐらかす林太郎に対して、謙吉は烈火の如く怒った。傍らでエリスが不思議そうに二人の日本語での遣り取りを見ている。
「ほら、エリスも脅えてるじゃないか。謙吉、笑いなよ」
「話を逸らすなっ!!」
さらに怒りの表情を現す謙吉は必死に胃の辺りを押さえていた。これ以上は可哀想と思い、林太郎は今までの経緯を全て話した。
「そうか・・・。そんな事が独逸で・・・」
謙吉は腕組みしながら唸った。
「何とかなるか?」
何時の間にか、林太郎の表情も真剣そのものになっている。
「やってできぬ事はなかろうが、こればかりは天方さんに聞かねば・・・」
「そのアマガタという人は何所なんですか?」
エリスが尋ねる。謙吉は今、気付いたように声を上げた。
「あ。駅だ・・・」

その頃、駅

「ひ、ひえっくしょい!!謙吉〜〜、何所に行ったんだ〜〜」

謙吉達の宿泊しているホテル

「大体の話は謙吉から聞いた。お主らも大変だったであろう」
事情を聞いた天方伯はウンウンと頷きながら2人を見ていた。林太郎は申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません。無理な事だとは承知なんですが・・・」
「いやいや、こちらとしてもありがたい。条約改正の交渉が上手く行かなくてな。日本に帰る口実ができると言うものよ」
豪快に笑い飛ばす天方伯を見て、2人は思わず吹き出した。
「で、日本に帰ってどうするね?」
天方伯は質問をガラリと変えた。
「私の方は医者の知識があるので開業医とかやれると思うのですが・・・」
そこで言葉を切って、エリスを見る。当時の日本を考えると外人の恋人がいる事は到底許されない事であった。つまり、林太郎はよくても日本の政情が許さないという事なのだ。
「林太郎、そういえば愛媛に友人がいると以前言っていたがそいつは頼れんのか?」
「ああ、金之助の事か・・・。帰ったらあいつにも連絡しなきゃな・・・」
林太郎はそう言って、古くからの友人、金之助の事を思い出していた。夏目姓を名乗る彼は愛媛で英語教師をやっていた経験があり、英吉利への留学経験もある。それよりも彼も林太郎と同類という点で一致するのだ。
つまりは彼も英吉利で悪の組織に改造された改造人間であるのだ。
ひょんな事で出会った彼と留学前までは良い付き合いをしていた。独逸留学後は手紙を出す暇もなく音沙汰も無かったのだが。
「一度、会わずにはなるまい。私もこんな姿になったのだから・・・」
ポツリと呟く林太郎に遠くからの放たれた殺気が届いた。
「皆さん、ちょっと失礼します」
そう言うや否や、林太郎は部屋を飛び出した。
「何があったと言うんだ・・・」
「天方さん。はっきり言って、僕の説明を聞いてないでしょ?」
「そんな事は無い。独逸はビールが上手いと聞いてるぞ」
「・・・聞いてませんね?」
肩を震わせて謙吉が言った。天方伯は聞こえない振りをしていた。もっとも、数秒後に謙吉の右ストレートが飛んだのは言うまでも無い。

屋上、

「ウェルテルの次は貴様か・・・ファウスト」
「当然だ。貴様を逃すのはゲルマン民族の誇りを傷つける事になりかねんからな」
「独逸のナンバー1すらも追いかけて来るとは・・・」
「変身!!」
林太郎がそう唱えると再び、眩い光が彼を包んだ。

説明しよう!!
と思ったが前回の変身シーンでそれはやっているので省略させてもらう。もし見たければもっと前に戻るがいい!!

「行くぞ!ファウスト・・・」
オーガイザーになった林太郎がファウストと対峙して言う。
「望む所よ・・・」
ファウストが返す。
両者の間に冷めたい空気が流れていた。
先に動いた方が負ける。バトルモノにはありがちなパターンだった。
その状態で先に動いたのはファウストの方だった。正確には彼は体を動かしてはいなかったが。
「ぐっ!!」
瞬間、オーガイザーの身体が持ち上がる。ファウストは念動力の持ち主であったのだ。
「さしものお前でもこればかりはどうする事も出来まい」
ファウストは微笑を浮かべていた。オーガイザーは見えない手で首を締められている感覚に陥った。
「くそっ!」
必死にもがくオーガイザーだったがそれを見ていたファウストは苦虫を潰したような顔をした。
「貴様のもがく姿なぞ見とうない!さっさと死ね!!」
そういって、右手を思いっきり振り下ろした。すると、オーガイザーが地面に叩き付けられたのだ。
「がはっ!!」
苦痛に顔を歪めるオーガイザーだったが、ファウストは気にも止めずに再び、念動力を使って、オーガイザーを持ち上げた。
「次で最後だ・・・」
ファウストが叫んだ時、屋上のドアが大きな音を立てて、開け放たれた。
そこには・・・、
「エリス・・・。何故来たんだ!!」
「だって、嫌な予感がしたの。それであなたの気配を探して・・・」
「フン、エリスか。都合がいい!貴様もオーガイザー共々、始末してやる!!」
「や、止めろ!ファウスト!!でないと・・・」
「でないと何だね?君が許さないとでも言うのか?馬鹿らしい」
オーガイザーを一瞥すると、ファウストはエリスに向かって、念動力を飛ばした。だが・・・
「な、何だこれは・・・。私の念動力が通用しない?」
「彼女は独逸でも有数のエスパーだったんだ。それに気付かなかったのがお前の敗因だ」
何時の間にかオーガイザーが自由になっている。無意識にエリスに集中してしまったからだろう。
「林太郎さん、今です。今の内に・・・」
「分かっている!!行くぞ・・・舞姫ボンバー!!」
「ば、バカな・・・。独逸のナンバー1である私がこのような所で・・・」
「だ・だがな・・・、覚えておくと言い・・・。貴様らに平穏の日など訪れぬ事・・・をな・・・」
不吉な言葉を残し、大きな爆発音を挙げ、ファウストは消滅した。

ペテルブルグの港

「いよいよ、日本に行けますね・・・」
「ああ、そうだな」
徐々に小さくなる港を見つめ、林太郎とエリスが話し込んでいる。その光景を見ていた謙吉が呟く。
「全くいい気なもんだ。こっちはこっちで・・・」
チラリと横を見やる。いつもの様に熟睡している天方伯がいた。
「政府の高官に何て言えばいいんだ・・・。ありのまま伝える訳にはいかんし・・・」
一人だけが憂鬱になっている謙吉の心配をよそに、船は海を走り続ける。次に待つ、運命も知らずに・・・。


次回予告!!

黄金の夜明け団独逸総統・ゲーテが遂に牙を剥く!!
揺れる船の上で苦戦を強いられるオーガイザー、その時奇跡が起きた!!
次回!文豪 オーガイザー
第32話・大和魂VSゲルマン魂、崇高なる魂の船上決戦!!
乞う、ご期待!!




☆後書き☆

途轍もなくオリジナルに近いパロディに・・・。
それが書き終わった率直な感想でした。にしてもアクション物は苦手なのにこんな長編になっちゃって・・・。読むのは大変だろうと思います。
お判りと思いですが、念の為説明を。
この作品はきらら一月号、「市立鋳銭司学園高校放送部」の文化祭発表ネタのパロディになってます。設定は日本に来る前のオーガイザーにしてみました。無論、ネタ元は「舞姫」です。(手元にあってよかった)
当然ながら、「舞姫」はこんな話ではありません。あしからず。本編の声優を見てみたら、
森林太郎&オーガイザー役:照岡聡
エリス役:倉江智
になってたので、エリスのキャラはちと失敗気味と思います。
今後の放送予定は、
第33話・親友、金之助との再会
第34話・3人目の男
第35話・偽りの友情、友との離別 (最終話・前編)
最終話・さらば、漱石!!クロウリー派の最期!!
が、予定されています。

長くなってきたので最後に一つ、

このネタだけは1回こっきりにさせて下さい!
本当に勘弁して下さい。これ以上は無理です、このネタは・・・。
では、次作品でお会いしましょう。